コラム

イチローの伝えたかったこと

先日、イチローが自己肯定感について語るYoutubeを見ました。 もともとのインタビューの目的は、あれだけの実績を残したイチローは、きっと自己肯定感が高くその状態を常に保っているのだろうという想像のもとに行われたと思います。 そういう前提で、どうやったら自己肯定感が生まれ、そして確実なものになるのかを聞きたかったのだと思いますが、インタビューは思わぬ方向へと進みました。

 イチローが言うには、自己肯定感が高くないどころか、自己肯定感を持っていること自体に違和感を感じると言うのです。 もちろん、だからと言って自己否定をよしとしているわけではなく、自分の今の状態が「よくできている」状況ではなく、常に疑問符をもっていると言っていました。 つまり、今の自分は本当にベストな状況か? もっと、良いやり方があったのではと、常に自分自身に問いかけていると言うことです。 彼は、なにが一番嬉しいかと言えば、「手応え」だとも言っていました。 できなかったことが、できるようになる。 そして、手応えを一つ一つ感じて、次のステージへと向かう。 こう言うことを続けてきたというのです。

とても、興味深いお話だったので、勝手にイチローの考えていることを、分析してみたいと思います。 おそらく、彼は自己肯定感が強いのではなくて、自己効力感が強いのではと感じました。 自己効力感とは、目標を達成する際に「自分ならできる、きっとうまくいく」と信じることができる”認知”のことです。 自己肯定感との違いは、自己肯定感は現状の自分を無条件に認めることですが、自己効力感は将来の”あるべき姿”を認めると言うところが大きな違いです。 つまり、イチローは常に”あるべき姿”があって、その姿は達成できると信じているからこそ、現状はいつも”疑問”なのだと思うのです。 あるべき姿は現状では達成できていない姿です。 だからこそ、現状に満足しなにので、「俺は**できるはずなのに、どうしてできないの?」と問いかけてしまうのではと思います。 そして、その”あるべき姿”を実現すると、手応えを感じるのですが、その時にはすでに、次のあるべき姿があって、達成した現実にすら、また疑問を抱くのです。 彼が達成した状態を「満足」と呼ばずに「手応え」と呼んでいるのが、そう考える所以です。

 人はあるべき姿をリアリティを持って、実現できると信じると、勝手にその方向に向かって努力すると言われています。 彼は、その”あるべき姿”を常に高く持って、そして、それをアップデートし続ける。 だからこそ、日本一にとどまらず、世界一と呼ばれる打者になったのではないでしょうか?